Canon EOS & Magic Lanternによるraw videoの良い点をまとめてみました。
よいところ1 雰囲気のある綺麗な絵がとれる
写真のRaw撮影同様に、編集工程における光と色のコントロールにより、自分の思い描く雰囲気や世界観を動画上でも演出することができます。
Magic Lanternの一番の醍醐味は、ここにあると思います。
EOSのraw動画は、最近のミラーレス一眼の動画に比べると、高解像度ではなく、シャープでもありません。
しかしながら、最大14bit rawにより色の階調が豊かに記録されています。
そのため、編集工程でのカラーグレーディングによって映像が破綻(例えば青空が段々畑になるようなこと)することなく、美しく滑らかな色の変化を楽しめます。
編集工程で色と光をコントロールし、シネマティックな映像作品を作るのに最適なカメラと思います。
よいところ2 カメラが安い
Magic LanternでRaw Videoを撮影する環境は、リーズナブルに揃えられます。
Magic Lanternとは、先の記事で書いたようにEOSのファームウェアをhackしてEOSの機能を限界まで引き出すプログラムです。
2020-tokyo-olympic.hatenablog.com
現状hackingできているEOSは旧世代に限られています。
EFマウントだと
EF-Mマウント(ミラーレス)だと
- M, M2まで
参考 Magic Lantern公式サイト Magic Lantern Nightly Builds
これらのカメラは中古市場で流通量が多く、安価です。
流石にフルサイズのEOS 5D IIIは今でも高価ですが、ミラーレスのEOS Mなら、ヤフオクで標準ズームレンズ込みで15,000円以下で買えます。
私はSONY a7cを所有しています。 SONYのミラーレスは、AFが正確かつ高速で、映像もシャープでモアレ等なく、ボケも美しく、間違いのない選択だと思います。
しかしながら、編集工程で色を載せた瞬間に驚きを与えてくれるのはEOS Mのraw動画です。
もちろん、10bit 4:2:2での映像収録に対応したミラーレスや、rawに対応したbmpcc等を用いれば、グレーディング耐性を備えた美しい映像は手に入ります。
しかしながら、15,000円のコンパクト(バッテリー込みで298g)なEOS Mの「気軽さ」は、他を圧倒しています。
カメラが安いということは、レンズも安く、周辺機器も安いです。
SONYのフルサイズだとレンズ一本買い足すのに躊躇することが多いですが、こちらはあまり何も考えずに(考えることを放棄して)、楽しく散財できます。
同様に、aliexpressで安価なアクセサリー(ろくに使いもしない)を探すのも実に楽しいです。
よいところ3 撮影や編集が面倒で、その分趣味性が高くハマりやすい
最新ミラーレスに比べると、EOS + Magic Lanternの撮影と編集は非常に面倒です。
MF撮影が面倒、でも楽しい
まず、AFはほとんど使えないため、基本的にMFでの撮影となります。
プロカメラマンならMFは当然のことだと思いますが、コンシューマーユースにおいて、マニュアルで動画を撮るというのはあまり一般的なことではないと思います。
EOSでの撮影時には、フォーカスピークのエッジを際立たせることができ、どこにピントがあっているのか視覚的に強調表示させることができます。
しかしながら、フォーカスピークの幅が割とあるため、目的のポイントに対して本当にピントが合っているのかわかりません。(液晶も小さいですし)
そのため、都度画面を拡大してフォーカス具合を確認する必要があります。
私は特定の被写体を際立たせたいため、基本的にF値開放で撮影し、背景をぼかすような映像を多く撮ります。
となると、被写体にピントがきっちり合っていないとイマイチな映像になってしまうため、時間が許す限り画面を拡大してピントを確認しています。
そのため、撮影のたびに時間がかかります。
撮影時には、心と時間の余裕が必要です。
MFは撮影の手間がかかる一方、自分の思い通りにピントが当てられ、特定の被写体を際立たせることができます。
また、あえてピントを外したり、あえてゆっくり合唱させたりするなど、シネマティックな演出もできます。
私は子供とのお出かけを主に撮影しており、動き回る子供にフォーカスを当てるのは大変困難ではありますが、ちょっとしたズレや合唱までのタイムラグがエモい感じを演出してくれるのが、面白かったりします。
ダイナミックレンジが狭くて撮影時に注意が必要、でも楽しい
ダイナミックレンジが広くなく、なおかつ暗部のノイズが多いです。
そのため、常に露出オーバーギリギリを狙い、暗部をできる限り明るめに撮る必要があります。
例えば「空」と「木陰」の両方をフレーム内に収める場合、空に露出を合わせると木陰が暗すぎます。
木陰(暗部)はノイズの巣窟となっており、編集時に暗部を明るくすると盛大なノイズが現れます。
そのため、次のような対応が必要です。
編集時に暗部は無理に明るくせず、潔く黒く潰す
暗部をメインに撮りたいのであれば、空をフレームアウトして暗部の明るさを基準に撮影する
最新ミラーレスは、写真も動画も、ダイナミックレンジの広さに力を入れています。
SNS等で発信される写真も、暗部のないHDRがトレンドだったりします。
一方、eos mは逆で、明るいところに基準を合わせ、暗いところは潔く黒く塗りつぶさなければなりません。まさにフィルム写真の感覚です。
最初はダイナミックレンジが狭くて映像撮影に不便だなと思っていましたが、今では、光を捉えることが楽しく、あえて明暗差のある景色を撮影したくなります。
このように、いろいろ気をつけて、手間をかけて撮影する必要があります。
子供達と一緒に公園に行って、花などを撮影している間に、妻と子供は遥か先に行ってしまいます。
しかし、この面倒くささが、楽しいです。
編集時には、raw動画ファイルを一般的な動画フォーマットに変換する作業が必要となります。
この変換作業には、マシンパワーが必要です。
シャープネス向上などの処理を加え、カラーグレーディングに備えてlogカーブをかけて出力します。
その後、davinci resolve等の編集ソフトで、手ぶれ補正やカレー補正、カラーグレーディング等を行います。
色々と手間はかかりますが、その分いい感じのアウトプットが得られるので、苦に感じません。
非常に趣味性の高い領域だと思います。
ということで、よい点を3つを書いてみました。
初めて動画撮影する人にとっては、撮影&編集がただ面倒くさいだけのカメラとしか感じない可能性が高いと思います。(そういう人がWebサーチ等を経てMagic Lanternにリーチすることはあまりないと思いますが。)
一方、SONYのαシリーズやPanasonicのGHシリーズでシネマティック系の動画を撮っている方は、試しに使ってみると、面倒だけど面白いと感じると思います。
是非お試しください。
おしまい